経験主義について
経験主義は、英国知識観の基礎を為すものである。
私は先験的な知識は存在しないという立場を取る。人間は生まれ落ちた瞬間から、すべての知識を後天的に獲得する。人間が生まれ持って持っているのは、"能力"のみである。この能力とは、知識を吸収する能力と、それらを内部で発展させる能力である。一七世紀英国の哲学者、ジョン・ロックはこれを反省能力と呼んだ。
ゆえに、私は人間の知識の差については、すべてこの先天的能力(これらはいつか、DNAの解析によって明らかになるであろう)と、後天的経験によって説明することができると考えている。仮説的には、同じ人間をつくることもできる。人間の個性とは、無限定に信仰されてよいものではない。
人生の"意義"や"価値"に関する問題についても、個人個人の経験の集積と、それを踏まえたうえでの功績に基づくという立場を取っている。
そういった意味では、経験主義はサルトルの歴史観に基づく実存主義に接続していると言えるかもしれない。